やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました
書庫での作業を黙々と終え、ぽんぽんと手を軽く払いよし、と一息つく。
そのままドアへ踵を返すと、そこには美夏が思い詰めた顔で立っていた。
「……美夏? どうしたの?」
「雪子……あんた……」
はあ、と溜息を吐いて顔を背ける。
「え、何?」
急いで近寄れば美夏にびしりと片手を突き出され、拒絶の姿勢を取られた。
「いいの! 本当は言って欲しかったけど、いいの! せめて早めに知れて良かったわ! じゃあ!」
「え、何? 何の話……? ちょっと美夏?? おーい」
扉の向こうに消えた背中を追いかけて廊下に出れば、笑顔の河村君が立っていて背中が強張る。
「か、河村君? 研修は?」
そう問われてにこりと笑いながら首を傾げる仕草はまあまあ様になっている。が、今は憎らしい。
「麻倉さん十五時から急な来客が入ったらしくてさ、代打を三上さんにして貰っちゃった。三上さんと麻倉さんは同期だし仕事も同じ内容だもんね。もちろん課長の同意も得てるから」
げっと口から出そうな悪態を何とか飲み込み、代わりに必死の抵抗を示した。
「い、嫌よ! 河村君と二人なんて……前科があるでしょ!」