やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました
「──多分……初めて、というか……」
いや、智樹とキスした事はあるのだ。
一度だけ、だけど。
けれど、その時彼は悔恨に満ちた眼差しで雪子を見た。から、
雪子も後悔した。
まだ智樹には、愛莉さんがいるのに……
流されるような雰囲気になった自分を叱咤した。
気まずい沈黙の後は、お互い無かったように振る舞うのが精一杯で。
そんなファーストキスの思い出が蘇っては、あの時と違う状況に胸の鼓動が止まらない。そんな自分に戸惑っているのだ。嬉しくて。
「幸せな、キスでした……」
そんな理由で、どうしていいか、分からない。
そろりと視線を向ければ口を開けたまま貴也は固まっていた。
聞こえなかったんだろうか、と首を傾げれば、貴也ははっと我に返り、「え? 日向とは? しなかったの?」と捲し立てた。
「あ、ええと……一回だけ……でも嫌だったみたいで……その、んんっ?」