やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました

「ええっ?」
 なんて驚く。
「あー、やめてー」

 焦る雪子に、貴也は雪子の肩口に顔を埋めて話し出した。
「可愛い顔されると、ますます自制が効きませんっ」
「……っ」

 ──首元で話すの止めて欲しい。
 掛かる息に動揺が増してしまう。

「し、してませんっ、元々、こういう顔なの!」
「じゃあ普段から俺のこと誘惑してるんだ」
 してないよ!

 けれど叫びは喉の奥に引っかかったまま出てきてくれず。代わりに、というか、雪子に出来るのはぷるぷると震える事だけだった。

「し、してないったらっ」
「分かったから、泣かないでよ」
「泣いてないよ!」

 けれど首筋に落とされる唇に、再び羞恥からか涙が浮かぶ。身動ぐ度にこちらの様子を窺う貴也と目が合えば、どうしていいか分からなくなる。
 赤らんだ顔で目尻に涙を溜めた顔は、どう見ても泣き顔にしか見えないだろう。

 はあっと、今度は悩ましい溜息が落とされる。
「本当どうしよう」
 言いながらどこか確信めいて触れてくる貴也の手に、指に、抗える自信なんて、皆無で……

 どうしよう……

 式は多分、年内の、冬になる前。
 慌しい時間が始まる中で、これ以上貴也に、夢中になっていいのかな。
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