やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました

「た、貴也? ご飯出来てるよ。食べてきたなら、明日でも……」
「うーん」
 恥じらい身動ぐ雪子を抱えながら思案する。

 首元に唇を寄せていたらくすぐったいようで、逃げようとするものだから腰をしっかりと抱き直す。

「お風呂」
「あ、沸いてるよ」

 少し照れながら口にしている様子は見逃さない。
「一緒に入ろう」
 そう言えば赤くなって固まってしまう理由も分かっている。

 ──後から物凄く怒られた。
 顔を真っ赤にして涙ぐむものだから、罪悪感とは違う感情に振り回されて大変だったんだけど。

 けれど、ごめんと言えば許してくれる、少し単純な雪子。
 とはいえ今日はまだ警戒されてるらしく、先程の問いには、うん、と答えてくれない。だからもう少しだけ、ねだってみる。

「ねえ雪子、何もしないから」
「……え、ほんと?」
 
(あ、駄目だ)
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