やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました
ひくりと頬が強張るのを感じる。
男の先輩からの合コンの誘い。
同棲相手がいると知っても誘うらしい。
「お願い、智樹」
擦り寄る愛莉にいつもの返事をする。
「いいよ」
するとぱあっと花のような笑顔が返ってきて。
「嬉しい! 智樹、大好き! じゃあお金持って行くね!」
嫌な顔をすれば愛莉は泣くから……
先輩に怒られてしまうと、職場で嫌われる。と──
二人で貯めようと始めた結婚準備金。
貯金箱に入れては出すを繰り返すから、銀行に預ける間もなく無くなっていく。
他の男と飲むために減っていく俺たちのお金。
俺に黙って行くのは忍びないから、と始めたこの報告は、いつまで続くんだろう……
知っても知らなくても頭が痛い。
もしかして結婚してからも……
いや、そんな筈はない。
首を横に振る。
愛莉はそんな女じゃない。
──そんな女って、どんな女だ……?
一瞬過った考えを振り切るように、俺は身を捩り、背中にいる愛莉を抱きしめた。
「愛莉、愛してる」
「私もよ、智樹」
嬉しそうに背中に回される腕に答えるように、俺も愛莉の小さな身体を一層きつく、抱きしめた。