やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました
──まあ、あると言えばそんな謝罪の予定だけなのだけど……
(本当のところは、会社では言えないものね……)
何故か込み上げる寂しさを噛み殺し、曖昧に笑って誤魔化す。
すると目の前の女性は視線を逸らし、諦めたように口にした。
「結婚間近なのね」
「ええ!?」
思わず飛び出た頓狂な声に慌てて口を手で塞ぐ。
「あ、あのっ。そこまではまだ……というか、ごめんなさい私、急がなきゃいけなくてっ」
訝しげに眉を顰める女性に慌てて取り繕い、踵を返してその場を後にした。
(違う、違う。プロポーズなんてされてないもの……それ以前に……)
「付き合って……無い」
ぽとりと落とした言葉は耳によく響いた。
そうだ、自分たちは……いつの間にか距離が縮まり仲が良くなっただけの、ただの友人、なのだ……
どうしてか胸が塞いで、くしゃりと歪みそうになる顔を口元をひき結んでやり過ごす。
(私たちって、何なの……)
そして……
河村君の何者でもない自分を、どうして悲しいと思うのか……私もいい加減、気付いてしまった。