やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました
貴也視点
「……ごめんなさい」
俯いたまま彼女が零す言葉に身体が強張った。
肩に触れた手はまだ離れたく無いらしく、彼女にしがみついたままだ。
「つまらない事に巻き込んで……」
「そんな事ないよ」
大事な事だ。
ちゃっかり彼女の隣に居座って来たけど、いい加減彼女の気持ちを聞きたくて、自制が辛くなっている。
問い詰めて追い詰めて、無理にでも好きだと言わせたい、けど……
三上さんの気持ちは少しずつこちらに向いて来ている、と思っている。だけどやっぱり日向の存在が気になって仕方がない。
あいつは彼女の中に、まだどれだけ残っているんだろう……もう好きじゃないって、彼女の口から聞いておきながら、未だそんな考えが頭を過ぎる。
そんな気持ちを残したまま無理を通せば、きっと彼女が困るだろうと。そう思って置いていた距離が、今はもどかしくて仕方がない。
ちゃんと付き合ってたら……
焦れる指先が彼女の肩で戦慄いて、慌てて力を抜けば、困ったように彼女は笑う。
「助かったよ、ありがとう」
(……さっきの女みたいに、弱さを見せて縋ってくれたらいいのに……)