運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~
でも…
なぜ…
まさか…
さっき龍崎部長が言っていたこと…
そんなことって…
ありえないよ…
龍崎部長との出来事は全否定したかった。
すべてが夢だったと思いたかった。
私は家に着き、もやもやした気持ちをさっぱりとさせたくて、お風呂に入ることにした。
シャワーを頭から浴びて、すべて洗い流したかった。
今日起きた出来事や、聞いたこと全てを洗い流したかった。
でも、どうしても忘れられない…龍崎部長の口づけの感触…
思い出すと体の中から火照りが沸き上がり…体が熱くなる…
助けて…忘れたいのに…体の深い部分が疼いている…
お風呂から上がると、健斗が帰って来ていた。
健斗はネクタイを緩めながら、お風呂から出て来た私に話しかけた。
「恵美、ただいま…もうお風呂入っていたんだ。今日は早いね。」
私はお風呂から出ても、体の火照りが治まらずにいた。
堪らず健斗に抱き着いて、自分からキスをした。
私からキスを強請ることは初めてだったので、健斗は驚き目を大きく見開いた。
「め、恵美…どうしたの…今日はやけに積極的だね…嬉しいけど…ちょっと待って…」
「待てないよ…健斗が欲しいの…今すぐに…」
「そんなに求めてくれるなんて…初めてだね…そんなに煽らないで…どうしたの?」
健斗は戸惑いながらも、口づけに応えながら抱きしめてくれる。
いつもの優しい口づけは、私を味わうようにゆっくりと深くなる。
(…気持ち良いはずなのに…)
(…何かが足りない…)
(…私の火照った体は満たされない…)
「恵美、どうしたの?何かあったのか?」
「何でもないよ…健斗が欲しいの…」
(…もっと…)
(…もっとして…)
(…健斗でいっぱいにして欲しいの…)
健斗は熱く私を抱いて私のお願いを優しく受け止めてくれた。
しかし、その日は体が満たされても、心まで満たされることは無かった。
(…なんで…まだ満たされないの…)
(…嫌だこんな私…)
(…健斗を愛しているのに…)