運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~
…翌日…
「ねえ…恵美それでさぁ…彼がね…うふふ…」
元気になった京子は今日もランチを食べながら、彼の話に夢中になっている。
(…よかったね…京子…)
穏やかな日常、いつものランチ時間が戻って来た。
京子と私はお気に入りの、イタリアンレストランでランチをしていた。
このお店はジェラートも美味しく、食欲が出た京子はジェラートを選びながらご機嫌だった。
ただ、私だけは穏やかな日常では無かった。
昨日、龍崎部長の口づけから、体の中が熱く疼き治まらない。
あんなに健斗を求めていたのに、まだ私の体は何かを欲しがっているようだ。
(…あんなに健斗を求めたのに、まだ体の火照りは収まらない…)
(…体の奥が疼いているみたい…)
私は顔が熱く火照りを感じていた。恐らく頬が赤くなっているだろう。
京子に気付かれるのではないかとヒヤヒヤしていると…
「恵美、なんか顔が赤いけど…熱でもあるんじゃない?」
京子が私の額に触れた瞬間にビクッとしてしまった。
「ごめん、京子。風邪かもね、後で医務室へ行って薬もらってくるよ。」
「私も一緒に行こうか?」
「大丈夫…京子にうつすと嫌だから一人で行くよ…」
「…うん。じゃあマネージャーに伝えとくね。」
「ありがとう。伝えといてくれると助かる。」
京子は風邪と伝えた私に、疑うことなく心配してくれた。
自分自身でもこんなことは初めてなので、体がどうなってしまったのか良く分からない。
(私の体…どうしちゃったのかな…)
コンコンコン…カチャ…
医務室の扉を開けると、看護師の可愛い女性が振り向いた。
その女性は私に気付き、心配そうな瞳を向けてくれた。
「…どうなさいましたか?」
「…あの…熱があるみたいで…少し休んで良いですか?」
「大丈夫ですか…、それでは鎮痛解熱剤お渡ししますね。」
「少し休むと良くなりそうです。奥のベッドを使ってもよろしいですか?」
「もちろん…ゆっくりしてください。でも私はこれから少し外出してしまいますが、遠慮なく寝ていてくださいね。」
「ありがとうございます…」
(よかった…少し一人で落ち着こう…)
私はベッドに横になり目を瞑った。
疲れていたこともあり、すぐに寝れたようだ。
暫くすると、私は何かの音に気付き目が覚めた。
時計を覗くと、1時間以上はもう寝ていたようだった。
私はゆっくりと体を起こして、ベッドに座って軽くため息をついた。
その時、カチャ…ドアの空く音がして誰かが部屋に入ってくる音がした。
コツコツコツ…
その音が男性の靴で歩く音のように聞こえた。
「鈴木さん…大丈夫かな?」
その時、どこかで聞いたことのある声がした。
低く通る声の男性だ。
(…っあ…この声…まさか…)
「龍崎だけど、入って大丈夫かな?」
(なんで…ここに部長が…だめ…今…会いたくない…)
「…はい。どうぞ…」
カーテンが少し開けられ、龍崎部長が入って来た。
心臓がドクンと鳴る。
「さっき、マネージャーから聞いてね…君の体調が悪いと言うから心配したよ。」
「あ…あの…もう大丈夫です…ご心配おかけしました。」
「…そう。良かった。」
「あの…龍崎部長…」
「…っん?なにかな?」
(自分が抑えられない…)
(私、何を言おうとしているの…)
(自分に嘘がつけない…)
「あの…昨日の…続きを…」
「昨日の続き?」
「続きを…して欲しい…です。」
「なんの続きかな?」
「だから…あの…昨日してくれた…」
「何をしてあげたっけ?言ってくれないとわからないよ。」
「私に…き…キス…してください…」
(私、何を言っているの!…)
私は自分の言ってしまった言葉に驚いた。
もう引き返すことはできない…
龍崎部長は一瞬驚いたようだったが、すぐに瞳が優しい色に変わった。
「…いい子だ…良く言えたね…沢山あげるよ。」
龍崎部長は私の顎を引き上げる。
唇に柔らかく温かい感触…
それだけで体が溶けそうな感じがした。