運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~
「健斗…健斗が来る前にここに誰かいた?」
「看護師さん以外は誰にも会ってないよ。」
「あの…龍崎部長とか見ていないよね?」
「え?なんで部長が?…恵美、夢見ていたのじゃないの?でも嫌だなぁ、なんで部長の夢見るんだよ…」
「ごめん…きっと仕事が気になっていたからかな?」
…夢なの…
…違う…夢じゃない
…翌日のランチ時間…
京子はいつも通りに、自分の話や噂話に夢中になっている。
「なんかね、怖い話聞いたのだけど、少し前に龍崎部長が、受付の女の子と一緒に歩いているところを見た人がいてね…気になっていたのだけど、その子それ以来会社休んでいたらしいの…」
「ふう…ん。たまたまじゃないの?」
「ここからが怖い話なのよ…その子…亡くなったらしいよ。」
「えっ…もう一度言って!」
「だから…亡くなったの。」
私の体に稲妻が走る衝撃だった。
もし本当に龍崎部長が悪魔だとしたら、命を取られても不思議はない。
「恵美、顔色悪いけど…大丈夫?」
「ごめん…ちょっと貧血みたい…大丈夫だよ」
「そう…大丈夫?この前からちょっと変だよ…気を付けてね!」
「…う…うん。ありがとう。」
私は…何かを確かめたくて、すぐに部長室に向かっていた。
なぜ向かっているのか自分でもわからない。
…トントントン
私は部長室のドアをノックしていた。
「どうぞ…入って…」
龍崎部長の低い声がする。
「失礼します。鈴木です…今よろしいでしょうか?」
「どうぞ…鈴木さん。どうしましたか?」
(…私…何を聞くつもりなの?どうして来ちゃったのだろう…)
「あ…あの…いろいろと…伺いたいことがあって…」
「…そう。どんなことかな。」
「あの…部長。この前、私が医務室にいた時、私に会いに来てくださいましたか?」
龍崎部長は少し時間をおいて、静かに微笑んだ。
「…うん。僕は医務室に行ったよ。君にキスしてくれって言われたよ…」
その言葉に、顔が爆発しそうに赤くなるのがわかる。
「それでは医務室で聞いたお話って、本当なのですよね…あなたの正体は本当に…」
「本当だとしたら…どうするつもりなんだ。」
「あの…受付の女性が亡くなったって聞きました。」
「情報が早いね。そうだよあの子は僕に夢中だと言って、ついてくるから抱いただけだ。」
「なんで…命まで…そんな酷い…」
「俺はあの子を直接殺してはいない。俺に夢中になりすぎて、魂が抜けてしまったのだろう…」
「そんなことって、本当にあるわけ無いですよね!」
(医務室での出来事も、受付の女性のことも…すべて事実なの?)
体中の力が抜けて、倒れそうになった私を、龍崎部長の腕が支えた。
「君はそれを聞きに来たの?それとも僕に会いたかったのかな?」
「い…いえ…会いたいなんて…違います。」
(本当は自分でもわからない…体が熱い…)
「俺にキスして欲しいのかな。いや…抱いて欲しいのか?」
「違います…抱いて欲しいなんて…」
「…抱いて欲しいなんて?なに?」
「だ…抱いて欲しいなんて…私は…」
「…私は?ちゃんと言ってくれるかな。」
(…もう嘘はつけない…)
「私は…私は…抱いて欲しいの…あなたに抱いて欲しいの!!」
「…そう。嬉しいよ…俺もお前が欲しい。」
「もう、私は…命が亡くなっても構わない…抱いてください。」
「安心してくれ…君の命は取らない…君は特別だからね。」
私は我慢できずに、龍崎部長の胸に抱き着いていた。
それに応えるように部長の腕に力が入り抱きしめられた。