運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~
しかし、私を抱きしめていた龍崎部長の腕が、突然私を引き離すように自分の胸から離した。悲しく辛い瞳で私を見つめている。
「今すぐにでもお前が欲しい…ただ、お前の命は失くならないが、俺以外の全てを失うことになる。覚悟はあるのか?」
「…どういうことですか?」
「お前は俺のものになるが、お前の大切な人達の記憶は全て塗り替えられる。」
「…えっ…記憶が塗り替えられるとは、どういうことですか?」
「高山健斗は、お前と同棲していた記憶が無くなるだろう。付き合ったことも忘れるだろうな。西条京子の記憶も、お前は友人では無くなる。同じ会社というだけだ。」
「そんな…どうして…なぜ…酷いです。健斗も京子も失うなんて…」
「それが出来なければ、お前を抱くことは出来ない…」
「…それが条件…なのですね。」
「そうだ。その覚悟ができたならば、俺のところに来い…それまで待っているから…必ず待っているから…」
(私はできない…健斗も失い京子も失うなんて…)
(記憶から消されるなんて…そんなこと耐えられない…)
でも…私の体は求めている…
あの人に見つめられたくて…
あの人に触れたくて…
あの人に抱き締められたくて…
あの人が欲しくて…
体が熱い…
助けて…この体の火照りを冷まして…どうしたらいいの…
…その夜…
私はまたいつもの夢を見た…
でも、悪魔は悲しい顔をしている…
行かないで…
私を置いて行かないで…
「恵美…恵美…大丈夫か?」
魘されている私を、心配そうな目で健斗が覗き込んでいる
「健斗、大丈夫だよ。夢を見ていたみたいなの…」
「心配したよ…魘されて、苦しそうだったよ…」
健斗は私をそっと抱きしめてくれた。
ゆっくりした健斗の心臓の音に安心する。
「恵美、なんか不安なんだ。わからないけど、恵美がどこかに行ってしまいそうな気がして、こんなに近くにいるのにな。」
健斗の優しい口づけ…
私の唇の間から忍び込む熱い舌…
私の舌を誘うように絡んでくる…
「健斗…抱きしめていて…」
着ていたパジャマの前は開けられ、胸のふくらみを健斗の大きな手が包み込んだ。
健斗はそれから優しく私を抱いてくれた。
私はその夜、何度も弓型に弾け熱い夜を過ごした。