運命の恋人 ～上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった～

「恵美、明日から大阪に２週間くらい出張になったんだ。大阪でトラブルでさぁ…」

「えー…急に大変だね…でも大阪からも連絡はしてね…」

「うん。毎日連絡するよ…恵美も一人だから気をつけろよ！」

「大丈夫…戸締りしっかりするから…健斗も気を付けて行ってきてね。」

「…うん。行ってくるよ。」

突然の出張で、健斗の居ない２週間はとても長い。
でも仕事だから我儘は言えない。
私は笑顔で健斗を出張に送り出した。

今日から健斗も居ないから、ゆっくりショッピングして帰ろうかな…

「ふぅ…ちょっと欲張って買い物しすぎた…荷物重いよ…」

最寄りの駅で降りた私は、独り言を呟きながら家に向かっていた。
商店街をぬけて、住宅街に差し掛かると人通りも少なくなる。

「あれ…なんか後ろから誰かついてきているような気がするけど…気のせいかな…」

私はあたりを見渡したが人影がない。
気のせいか！と思いまた歩き出した。

“ザッザッザツ…”

暫くすると、やはり後ろから靴音がする…
男性の足音のようだ。
恐い…どうしよう…！！

勇気を出して振り返ってみると…

「鈴木さん、お疲れ様です。」

そこにいたのは、同じ会社の男性で５つ年上の先輩、向井淳だった。
向井は同じ営業部の社員だ。

「む…向井先輩…お疲れ様です。でも…どうしてここに居らっしゃるのですか？」

「たまたま…と言いたいけど、違うんだ。」

「…っえ？」

「鈴木さん、君に話したいことがあってね。家にお邪魔しても良いかな？」

「あの…実は…私は…高山さんと…その…」

「高山健斗と付き合っているのは知っているよ。同棲していることもね。」

「じゃあ…なぜ？」

「今日から健斗は大阪だよね。このチャンスを待っていたんだ。家はこの近くだよね。お茶一杯だけもらえないかな？すぐに帰るから。変な事なんてしないよ、これでも健斗の先輩だしね。」

向井先輩は確かに健斗の先輩でもある。

（家には入れたくないけど…お茶飲んだらすぐに帰ってもらおう…）

「では…散らかってますが、どうぞ…」

「ありがとう。嬉しいよ。」

私は家に着くと、荷物を置いて向井をリビングのソファーに案内した。
向井は家をジロリと見渡すと、言われた通りソファーに座った。

「向井先輩、コーヒーでよろしいですか？インスタントですが…」

「ああ、悪いね…お願いするよ。」

私は急いでお湯を沸かし、コーヒーを淹れた。

「どうぞ…お砂糖とミルクはこちらに置きますね。」

「ありがとう。君は飲まないの？」

「私は夜にコーヒーは飲まないのです。カフェインで眠れなくなっちゃうので…」
「…そう。」


静かな部屋に沈黙…息苦しい。

「あの…向井先輩…お話ってどのような事ですか？」

静かに向井は不気味な笑みを浮かべる。

「俺はね、ずっと鈴木さんが好きだったんだよ。いつも見ていたのに、君は俺を気にもしてないだろ…」

「何を…言っているのですか？」

「俺は、健斗よりもお前を愛しているんだ…それなのに…お前は…」

「向井先輩…どうして！！」

「俺を愛してくれよ！俺の女になってくれ！」

向井は急に立ち上がると、私の手首をつかみ引き寄せようとする。
私はなんとか逃げようと抵抗するが、向井の力には対抗できない。
強引に引き寄せられ、ソファーに押し倒された。

「やめてください。何をするんのですか！！大声出しますよ！」

「大声出すがいい。誰も助けには来ないよ…。大好きな健斗君も今日は来ないよ！！」

両手を押さえられて、向井が私に覆いかぶさった。

（動けない…）

強引に口づけされる

（気持ち悪い…嫌…）
（健斗…助けて…）

向井は私の服を破き、ブラジャーを剥ぎ取った。
あらわになった胸にしゃぶりつく！
しゃぶりつく向井の舌から唾液が流れ出す！

（私…このまま…この人に犯される！嫌だ…誰か助けて！！）

スカートをめくり上げ、下着に手を入れてくる。

「お前…嫌がっても、ここは濡れてきたぞ。もっと濡らせよ！！」

向井の指が激しくと、痛みを感じる

「お願い…もう…やめてください…助けて！」

「こんな状態で…止められるわけないだろ！！」

向井はズボンのファスナーを下した！


（だめだ…もう…私…犯される！！）


私は少し諦めて目をぎゅっと閉じた。


（お願い…助けて…）


その時だった。

ドカッ…ドスッ…ガタガタン…

大きな音がして、私はそっと目を開けてみると…
そこに見えたのは、向井が倒れ蹲っているところだった。

（えっ…なに…何が起こったの！！）

理解できない状況の中、後ろから声が聞こえた。

「…大丈夫か？」

声のほうに目線を向けると、そこに居たのは…

「龍崎部長！なぜ…ここに居らっしゃるのですか？」

私に自分の上着を掛けると、包むように抱き寄せた。

「怖かっただろう…遅くなった。でも無事でよかった…」

その言葉に緊張感が解けた私は、涙が溢れて止まらない…

向井は目を覚ましたらしく、龍崎部長を見て怯えている。

「龍崎部長、なぜ…あなたが…ここに居るんですか…？」

「お前こそ、ここで何しているんだ？鈴木さんと仲良く話をしてるようには見えなかったがね。」

「くっ…邪魔しやがって…」

「向井、これ以上殴られたくなかったら、早く出ていけ…二度とここに来るな！」

向井は悔しそうな表情を浮かべて、龍崎部長に殴りかかってきた…

「うぁ！！な…な…なんだ！！」

まだ龍崎部長に触れていないのに、向井は後ろに吹き飛ばされていた。

「なんだ…これ…人間業じゃない…」

「これが最後だ…向井、殺されたくなかったら出て行け！」


向井の顔は、みるみるうちに血色を失う。
バタバタと逃げるように部屋を出て行った。