運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~
朝の電車はいつものように混雑している。
満員の車内で押しつぶされそうだ…
健斗は私を守るように抱き寄せてくれる。
幸せな日常…
私はいつも会社近くのカフェでコーヒーを買うことにしている。
「じゃあね、健斗。また会社でね。」
「うん。先に行くよ!」
今日のカフェはいつもより混んでいたため、少し時間がかかった。
私は会社へと早足で急いだ。
会社のロビーに到着すると、ちょうどエレベーターの扉が開いていたので、急ぎ飛び込んだ。
そこに居たのは、総務部の女性達3名
そして龍崎部長だった。
私はエレベーターの中へ軽く会釈して、背をむけるように扉の方を向いた。
総務部の女性が龍崎部長へなにか緊張しながら話をしようとしている。
誰が言うのか譲り合っているのがわかる。
どうやら龍崎部長がお目当てのようだ。
すると、一人の女性が話し始めた。
「り…龍崎部長…おはようございます。」
「…うん、おはよう。総務部の皆さんかな?」
「はい…そうです。私たちは総務部です。あ…あの…」
「…ん、なに?」
「こ…今度…ご迷惑じゃなければ…私達と…お食事ご一緒して頂けませんか…?」
「…もちろん。いいよ喜んで伺うよ…」
「あ…あり…ありがとうございます…」
「キャーすごく嬉しいです…」
女性3人は顔を見合わせて喜んでいる。
総務部は5階、私の営業部は9階で部長も9階だ。
“ポーン”
5階を知らせるエレベーターの音が鳴る。
「では…部長…またご連絡させていただきます…嬉しいです…楽しみです。」
総務部の3人は満面の笑顔を部長に向けて降りて行った。
扉が閉まると、急に緊張が走る…
龍崎部長と二人きり…どうしよう…
「あの…人気ありますね…それに…お食事にもいらっしゃるのですか?」
「…ん。それは…俺にやきもちかな?君が止めろというなら行かないけどね。」
「ちっ…ちっ…違います…」
“ポーン”
エレベーターが9階に到着する。
突然、龍崎部長は私の顎を持ち上げ、微かに触れるだけの口づけをした。
顔が熱を持って熱くなる。
「やきもちとは嬉しいね…」
そう言い残すと、何もなかったようにエレベーターを降りて行った。
私はその背中をずっと目で追っていた。
ほんの少し触れただけの唇が熱い。
心臓の鼓動が早くなる。
この気持ち…
私が愛しているのは健斗のはず…
でも…