運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~

その日の夜、なかなか健斗から連絡がなく眠れずにいた。
もう日付が変わる時間になり、私は大きく息を吐いてベッドで天井を眺める。
すると、携帯に健斗からの連絡が入った。

(--------あっ健斗から電話!--------)

「け…健斗…もしもし。」

しかし、その連絡は健斗の声が聞こえるのではなく、動画が送られているようだ。
動画?と不審に思ったが、急いで動画を再生すると…
そこには、ホテルのソファーに座る健斗が映っていた。
そこへ、三枝さんが何か飲み物を健斗に渡したようだ。
健斗はそれを飲んでいる。

(何を飲んだの?健斗大丈夫かな?)

暫くすると…
健斗は力なくソファーに倒れた。

(…えっ、健斗!どうしたの!!)

倒れている健斗に三枝さんが近づいて来た。

(三枝さん!健斗に何をするつもりなの?)

健斗は眠らされているように見えた。
動かない健斗の頬に、三枝さんは嬉しそうに触れている。

(何をするの!止めて!健斗に触らないで!!)

三枝さんは、健斗に顔を近づける。
健斗の頬に両手を添えると、ゆっくりと唇を重ねた。

(--------イヤ!------止めて!-------)

さらに健斗の上着の釦を外そうとしている。

動画はそこで終わっていた。
この後、何が起きたかは想像したくない。
私は、そのまま動けずに固まっていた。
余りのショックからなのか、涙もでない。
感情がストップしてしまったようだった。
自分が息をしているかどうかもわからない…
それからどれくらいの時間が経ったのだろう。
窓の外の色が変わり始め、外は少し明るくなって来たようだ…

その時、私の携帯が鳴りだした。
驚いて着信をみると、健斗からの連絡だった。
また、何か良くない情報が来るのかも知れないと、電話に出るのが恐かった。
祈るような気持ちで電話に出た。

「…恵美。こんな時間に、ごめんな。」

(-----------健斗なの?----------)

その声は、間違えなく健斗の声だった。
押さえられていた感情が爆発したように、涙が溢れて流れ出した。

「何から話して良いか、分からないけど、目が覚めたんだ!」

「…えっ…どういうこと…」

「恵美に、あの女が動画を送っただろ?あの後、何故か目が覚めたんだ!気づいた時あの女が抱き着いていて驚いたよ!」

「…でも、どうして急に目が覚めたの?健斗は薬か何かで眠らされたのでは?」

「…うん。信じて貰えないかもかもしれないけど、夢を見たんだ。」

「…夢…?」

「そう。夢に悪魔が出てきて、俺を殴って起こしたんだ。恵美を悲しませるなって言うんだ!」

「…悪魔って…」

「…信じないよな?でも、助かったよ。」

「…良かったね…」

健斗の話を聞いて、すぐに気が付いた。
悪魔とは、恐らく彼のことだろう…龍崎部長だ!
さらに健斗は慌てながら話し続けた。

「これから、急いで帰るから!」

「でも、3日間が約束でしょ。」

「大丈夫だ。あの女が俺を陥れるために、全部映像を撮っていたんだ。あいつのした事、全てが映っている。これを先方の会社に証拠として渡してやるよ。」

「でも気をつけてね…」

「…大丈夫だよ。もうホテルを出て空港に向かっているタクシーの中なんだ。」

健斗は三枝物産に、今回の映像を提出するようだ。
恐らく証拠を見せられれば、さすがに三枝親子もなにも言えないだろう。
< 37 / 100 >

この作品をシェア

pagetop