運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~
そして、私は健斗の話を聞いて、じっとしていることが出来なかった。

「…悪魔って…龍崎さん…」

気づけば急いで家を飛び出し、タクシーに乗っていた。

(龍崎さんが健斗を助けてくれたんだ!)

私は龍崎さんのマンションのドアの前に立っていた。

“ピンポーン”

暫くすると、ドアが静かに開けられた。

「…鈴木さん。朝からどうしたの?」

「…あの…健斗が…」

「あぁ、その事か…中に入りなさい。」

その時だった、昨日から一睡もせず、水すら飲んでいない私は目の前が真っ暗になった。
その場に崩れるように倒れて意識を失っていたようだ。

「鈴木さん、…恵美!恵美!」

(遠くで龍崎さんの声が聞こえる…)

どれくらい時間が経ったのだろう…
気がつくと、私はベッドに寝かされていた。
すると、横から声が聞こえて来た。

「気づいたか…大丈夫か…?」

心配そうな龍崎さんの声が聞こえた。
起き上がろうとするが、体に力が入らず起き上がれない。
龍崎さんは私を抱きかかえるように起こしてくれた。

「水でも飲めるか?」

私はコクリと頷いた。確かに喉も乾いている。
龍崎さんはグラスのコップから、自分が水を口に入れた。
そのまま口移しで私に水を注ぎ込んだ

(…美味しい…)

「…恵美…もっと飲むか?」

その時、やっと自分の状況に気がつき、心臓が激しく鳴り出した。

「あ…あの…今…く…口移し…しましたよね?」

「…うん。何か問題でも…?」

そう言うと、もう一度水を口に含み
私を抱き寄せ口の中に注ぎ込む。
飲みきれない水が顎に流れる。
その水を優しく親指で拭ってくれた。
私は顔が熱く真っ赤になっているのが分かる。

「あ…あの…」

その時、言葉が龍崎さんの唇で塞がれた…

ゆっくりと優しい口づけ…

すごく…気持ちいい…

口づけがこんなに気持ちいなんて…

龍崎さんは突然唇を離した。

「…恵美…このまま奪ってしまいたい…でも…お前の心は高山君を愛している。」

「あの…龍崎さん…昨日は…健斗を助けてくださったのですよね。」

少し時間をおいて、龍崎さんは話し始めた。

「あの女の卑怯なやり方は、嫌いでね。高山くんを、ちょっと手荒に起こしただけだよ。」

「ありがとう…ございます。」

龍崎さんは私をベッドから立ち上がらせた。

「そろそろ高山くんが帰ってくるんじゃないか…早く行ってやれ。」

「…はい。」
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