運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~
「こんばんは…龍崎部長、偶然ですね…鈴木さんと食事に来てたので、驚きました。」

「あぁ…西条さん、鈴木さん…偶然だね…!」

隣の男性も笑みを浮かべて振り向いた。

「初めまして、龍崎とは古い付き合いなんだ。早乙女です。
西条さんと鈴木さんだね…こんな美人なお二人が会社に居るなんて羨ましいな…」

早乙女さんは挨拶と同時に握手の手を出した。

何時ものことだが、先に京子は握手に応じた。
可愛い表情を作るのは京子の得意技だ…

私も京子に続き右手を出した。
その時、早乙女さんは少し驚いた表情を浮かべた…

「あっ…よ…よろしく…鈴木さん。」

私は早乙女さんが、なぜ驚いているのか不思議だったが、どこかで会ったことがあるような感じをかすかに感じていた…。

私達4人は、この後場所を変えて吞みなおすことになった。

提案したのは勿論、京子だ。

「それでは、改めて…美人お二人に乾杯…」

お店を変えて、早乙女さんは明るく乾杯の挨拶をした。

京子は早乙女さんに夢中のようだ…
「早乙女さん、とても素敵ですね…。」

隣に座る龍崎部長を見ると、少し浮かない顔をしているような気がした。

早乙女さんと京子に聞こえない小声で話し掛けた。

「あ…あの…龍崎部長…どうかされましたか?」

「いや…何でもない。鈴木さん…早乙女は…」

何かを言いかけて止めたことが気になった。

暫くすると、京子がお化粧直しにトイレに向かった…

京子と話していた早乙女さんは、解放されて、ため息をついた…
京子の言葉の攻撃に、かなり参っているようだ。

私は申し訳ない気持ちでいっぱいになり謝った。

「早乙女さん、ごめんなさい。西条さんがずっと話していて…疲れましたよね。」
「大丈夫だよ…面白い女性だよね…気にしないで…」

早乙女さんは優しい笑顔で応えてくれた。

その時だった…
「鈴木さん…僕のことわかりませんか?」

何を言っているのかわからず戸惑う私に、龍崎部長が話し始める。

「僕は、前世で双子だったんだ。俺の弟だよ…」

…どういうこと…何言ってるの…?

早乙女さんは静かに話し始めた…

「兄、ルシファーは大天使だったんだ。その弟のミカエルが僕だよ。
僕たちは戦う運命になったけど、元は双子の兄弟なんだ…」

信じられない…

そんなことが現実にあることも…

「あ…あなたはミカエルの…生まれ変わりなのですか…?」

雰囲気は全く違うが、美しい顔はどこか似ている気がする…

「僕は、偶然を装って鈴木さんに会いに来たんです。
あなたの運命を伝えにね…それを、止めに来たのが兄なんです…
僕は信じられなかったけど…兄の愛の深さがわかりました。
あなたの気持ちが変わるまで待つそうですよ…」

「早乙女…余計な事ばかり言うな…」

早乙女さんはクスッと笑った…
「そうだ…龍崎にプレゼントがあるんだ…お前の大切な羽は治したよ…これも鈴木さんのためだったんだね…」


羽を…治す…?

どういうこと…?


心の声が聞こえたように、早乙女さんが説明を始めた。

「僕は失ったものを、もう一度再生できるんだ…兄の美しい羽根も、再生させたんだ…憎むべき敵だけど、兄であることには変わりがないからね…」


そんな…神話みたいなこと…本当にあるの…

頭がくらくらする…


早乙女さんは、京子が戻る姿を見つけて急いで話を続けた。
「それから…龍崎が疑われているかも知れないけど、三枝物産のお嬢さんは、僕が罰を与えたんだ。人を陥れることは許されないからね…」


「…っえ…」


それを言い終わると、早乙女さんはいきなり立ち上がった…

「では…僕はそろそろ帰らなくちゃ…鈴木さんに会えてよかったよ…君に会って、少し兄の気持ちがわかる気がする…」

そこへ京子が戻ってきた…

「早乙女さん、もうお帰りですか…寂しいです…」


早乙女さんはクスッと笑った。
「西条さん…一緒に帰りますか?」

「えぇ…嬉しい…帰ります!」
京子は頬を赤くして大喜びだった…

早乙女さんは私達にウィンクをして見せた。

「じゃあね…恵美…悪いけど、帰るねバイバイ…」

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