運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~
会社に到着すると、知っている顔に挨拶する。


「おはようございます。」

「…お…おはようございます。」


何故か私に驚き…丁寧に挨拶をする…



…これって…

…私を覚えてないんだ…

…本当に…みんなの記憶から…消えてしまったの…

…感じたことのない寂しさと恐怖…



私は思わず、前を歩く龍崎さんのスーツの袖を掴んだ。
怯えている私の顔を覗き込み、片手を私の頬にあてた。



「大丈夫…心配するな…」
「…はい。」



営業部に着くとマネージャーが近づいて来た…

「おはようございます。鈴木さん、お待ちしておりました。これから朝のミーティングでみんなにご紹介しますね。」

マネージャーは微笑んで私に会釈した。


…昨日まで、一緒に仕事していた人たちが、私を知らない…


複雑な気持ち…

そして…一番恐いのは…

…健斗…


朝のミーティングが始まり、営業部の人たちが並んだ。


そこに健斗は居た…

いつもと変わらない爽やかな顔…

横の人と話している…笑顔で…変わらない…



話しかけたい…

きっと忘れられている…


マネージャーから紹介され挨拶で前に出た。

「今日、転勤でこちらに来た、鈴木恵美さんです。皆さんよろしく…」

「今日からこちらでお世話になります。鈴木恵美と申します。よろしくお願いします。」



私が頭を下げると、みんなが拍手で応える。

健斗も拍手で応えている…



近くには、京子もいた…


京子…


…本当に…忘れられちゃったんだ…


…わかっていたけど…


…こんなに悲しいことなんだ…


朝のミーティングが終わると、京子が話しかけて来た。

「はじめまして…私は西条京子と申します。よろしくお願いします。鈴木さんと私、同じ年なんです。仲良くしてくださいね…それと…噂なんですけど…鈴木さん龍崎部長の婚約者なんですよね…?それでこちらに転勤になったと聞いています。」


さすが京子だ…情報が早い

…でも…

…覚えてないんだ…


「西条さん、よろしくお願いします。噂は本当ですが、もうご存じなんですね…」

京子はクスッと笑った…

「やっぱり本当なんですね…きっと会社中の女性が、がっかりしていると思います…でも鈴木さんなら納得です。とてもお似合いです…。」


「ありがとう…ございます…」

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