運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~
健斗に新しい恋人をお願いしたのは私だ。

頭では分かっていても、健斗と彼女を見ると、胸が締め付けられる。

私は自分を落ち着かせようと、自動販売機の缶コーヒーを買うと、近くに用意されている椅子に座り、大きく深呼吸した。

何かが胸を圧迫しているようで、息苦しい。


(…分かっていたはずなのに…)
(…苦しい…)


暫くすると、誰かが販売機に来たようだ。


“ガタン”

自動販売機で飲み物を買う音がする。
その音に何気なく振り返ると…


…健斗!…


健斗は販売機から、缶コーヒーを手に取る。
私が椅子に座っていることに気付き、近づいて来た。


「鈴木さん…ですよね。高山と言います。よろしくお願いします。」

「…は…い…。こちらこそ…よろしくお願い…します。」

「少し顔色…悪い様ですが…大丈夫ですか?」

「大丈夫…です。」

私は慌てて立ち上がった。
急に目の前が暗くなり…倒れそうになった。
健斗は、慌てて私を支えてくれた。

「…鈴木さん…危ない…座ってください。大丈夫ですか?」



(…健斗…この腕の中…)

(…もう私の場所じゃない…)



「高山さん、ありがとうございます。もう大丈夫です。ちょっと目眩がしただけです。」

「あの…鈴木さん、僕とどこかで会ったことありますか?」

「…いいえ…たぶん…お会いしたのは…初めてです。」

「ごめんなさい。変な事言ってしまいましたね。では、僕は行きますね。気を付けてくださいね。」



健斗の後姿を見送った…


さようなら…


幸せになってね…



そのまま動けずに居た私の肩に、誰かが触れた。
ゆっくりと振り返る


「…龍崎部長!いつから居らしたのですか?」

「…辛いか…後悔しているようだな…」

「…いえ…後悔はしていません。少し寂しいだけです。」

龍崎部長は何も言わず、私の頭に優しく手を置いた。

「今日は僕も早く仕事が終わりそうだ…一緒に帰ろう…」

「…はい。」



後悔はしていない。

自分で決めたのだから。

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