運命の恋人 ～上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった～

さらに時間が経ち、僅かに開いているカーテンの光もなくなり、辺りはすっかり暗くなってきたようだ。

私は寒さと恐怖で涙が流れて来た。
私はどうなってしまうのだろうと、不安でいっぱいになっていた。

その時、廊下で誰かの話し声が聞こえて来た！

（…誰か来る…助けて！！）

扉の中から、ドンドンと叩くが気づいてはもらえないようだ。
扉近くで微かに人の声が聞こえる。


「こんな遅い時間に、申し訳ありません。急ぎ確認したいことがありまして…」

お客様と思われる人が話している声のようだ。


（…助かるかも！）


“カチャ、ピー”


ドアのロックが解除される音がした。


ドアが開いた！！


そこに入って来たお客様は！！



「さ…早乙女…さん…」

早乙女さんは、会社の役員と一緒に応接室に入って来た。

「鈴木さん…大丈夫かい？」

早乙女さんは優しく微笑んで私の手を引き寄せて抱きしめてくれた。
大粒の涙が止まらない。

会社の役員は、驚いた眼で私を見ている！

早乙女さんはその役員に向かって、冷たい笑みを浮かべながら話し始めた。

「やはり今日は遅い時間なので、用件は後日にします。こちらの女性は知り合いなので、一緒に連れて帰りますね。」

「あ…あの…早乙女さん…契約の件は…どうなりますか…？」

役員は少し焦り気味のようだ。

「今回の契約は…無かった事にしてください。」

「…っえ…？」

「こんな時間に、女性が閉じ込められている会社と、取引はしたくありません。」

「そ…そんな…」

役員は顔色を変えて明らかに焦っているようだ。

「では…条件があります。この女性を閉じ込めた犯人を罰してください。契約はその後ですね。」

その言葉を残すと、早乙女さんは自分の上着を脱いで、私に被せたてくれた。

「鈴木さん、もう大丈夫だよ…寒かったでしょ。」

早乙女さんの温かい腕の中で、涙が止まらない。

（…私…助かったんだ…）