運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~
午後一番のミーティングはとても眠くなる。
私は上瞼と下瞼がくっつきそうになるのを必死で堪えていた。
話の長いマネージャーがもう30分以上話している。
(…もう限界…早く話が終わらないかな…)
私は小さくフーっとため息をついた。
その時、突然ミーティングルームのドアがそっと開けられた。
誰が入ってくるのかと、無意識にドアに注目していると…
入って来たのは、龍崎部長だ。
何故か分らないが、私は一気に眠気が吹き飛び、緊張感が体を走るようだった。
なぜ、こんなに緊張するのか、私自身も分からない。
そして、何故か龍崎部長の視線がとても気になった。
気の所為かも知れないが、とても見られている視線を感じるのだ。
(気のせいかも知れないけど、龍崎部長とよく目が合うような…私…見られている…?まさかね…意識過剰だね。)
ミーティングが終わると、龍崎部長は何も言わず部屋を出て行くだけだった。
マネージャーは龍崎部長に緊張していたのか、ハンカチで汗を拭っていた。
「いきなり龍崎部長が入ってくるから…僕も緊張したよ…なんで来たのだろう。あの人の目は冷たい感じでなんか恐い感じがするね…」
確かに龍崎部長の秀麗な顔と、印象的で涼しげな瞳には迫力があり、冷たい印象もある。
ただ…なぜか…その目に引き込まれるような感じがする。
なぜか、逃げられない感じがするのだ。
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「恵美、悪い…待たせたね!」
健斗が息を切らせて走って来た。
ここは、私と健斗がよく待ち合わせで使う、会社の近くのカフェだ。
私はこの店のパンケーキが大好物で、今日も早めに到着し、美味しく完食済だった。
ハチミツがたっぷりのパンケーキにクリームとフルーツが絶妙なバランスでかなりのお気に入りだ。
「大丈夫だよ。でも絵画展が入場8時までだから急がなくちゃ!!」
「そうだな、急ごうまだ間に合う!あっ、恵美パンケーキもう食べたの…」
絵画展の会場には、思っていたよりも早く到着した。
まだゆっくりと絵画を見ることが出来る。
「…この絵は宗教画がモチーフで…」
健斗は得意気に絵画の説明をしてくれる。
健斗は元々絵画には少し詳しいが、絵画展のチケットをもらった段階で、展示内容などを詳しくリサーチしてくれていたようだ。
「健斗って意外に絵画に詳しいよね…私はまったく知識無いから、健斗と来てよかった!」
そして、私はとても美しい女性が描かれた絵の前に立ち止まった。
何故かこの絵に惹きつけられて、話しかけられているような不思議な感覚だった。
健斗はそんな私の様子に気が付き、絵の説明を始めた。
「この女性はリリスがモデルなんだ…リリスはね、サタンの妻とも言われていたかな…?」
私は聞き覚えのあるその名前に、体が震えた。
「…っえ…リリス?それにサタンって…悪魔のこと…だよね…」
「そう…でもいろんな説があるけど、サタンは悪魔ですごく美形だったという人もいるみたいだよ…悪魔の名前はルシファーとも言われて、元々は美しい大天使だったんだよ。」
「…そ…そ…っそう…なんだ…」
「恵美、急にどうしたの…顔色悪いし…ちょっと休もうか?」
私は全身が凍り付くような衝撃を受けて手が震えた。
夢の中の出来事が、すべて繋がったことに気付いてしまった。
(…リリスとは、私が夢の中で聞いた名前…)
(…偶然…いや違う…悪魔…その妻がリリスなの?)