運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~
さらに早乙女さんは、跪く修道士の方々に話し出した。
「私は少しだけ力を引き継いでいますが、今は人間です。跪くのは止めてください!」
早乙女さんは一人ひとりに手を添えて立ち上がらせた。
修道士たちにこの場から去るよう促した。
修道士の方々が去ったあと、私の横で圭吾は力なく膝を着いた。
脇腹を押さえ、血が滲んできている。
早乙女さんのお陰で傷は深くはなさそうだが、ナイフは圭吾を切りつけていた。
「圭吾!!早乙女さん!!大丈夫ですか!?」
私は訳が分からず、恐怖で涙がポロポロと流れ落ちた。
圭吾は片手で私の頬に手を当てて、優しく笑顔を見せた。
「恵美、恐い思いをさせてごめん。もう大丈夫だよ。」
圭吾は早乙女さんの方に顔を向けた。
「…早乙女…悪いな…助かったよ。」
「…龍崎、お前を助けたのは、恵美ちゃんのためだからな!悲しませるなよ!!」
「でも、なぜ俺たちが函館だってわかったんだ?」
早乙女さんはクスッと笑い
「お前の会社の女性たちが大騒ぎしていてね。龍崎部長が鈴木さんと北海道旅行だって悲鳴が上がっていたぞ!でも、嫌な予感がして便を調べて追いかけてみたんだ。間に合って良かったよ!」
私達はホテルに戻り、ホテル在中の医師に手当をしてもらった。
幸い二人とも傷は浅いようだった。
(大事に至らず…よかった…)
私は改めて早乙女さんにお礼を伝えた。
「早乙女さん…本当にありがとうございました。」
「恵美ちゃん、大丈夫だよ。悔しいけど、龍崎が居なくなると悲しむだろ…?」
「は…はい。」
「恵美ちゃんが良ければ…俺に乗り換えてもいいけどね!」
悪戯な表情をした早乙女さんが、私の額にキスをした。
「早乙女!!離れろ!!」
圭吾は早乙女さんを後から引っ張り、私から引き離した。