運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~
亮は不機嫌そうに、健斗を見た。
「お前は誰だよ…こいつの彼氏か?」
「俺は彼氏じゃないが…その人は俺の大切な人だ…離せよ。」
「何言っている…こいつ!!」
亮は健斗に殴りかかった。
健斗は手を出さず、亮に何回も殴られ続けた。
「止めて!!その人を殴らないで!!」
「なんだよ…こいつ…カッコつけやがって…つまんねぇ。」
亮は不機嫌そうに、健斗を睨みつけると店の中に入って行った。
亮が去ったあと、私は健斗に駆け寄った。
「高山さん!大丈夫…ですか?」
「す…鈴木さん…無事でよかった…」
健斗は私の頬を両手で包み、目を細めて笑みを浮かべた。
「高山さん。私のために、こんなに殴られて、なんで私を助けるのですか!!」
涙が溢れて止まらない。
私は、傷ついた健斗を強く抱きしめていた。
こんな自分のために、健斗は大切な人と言ってくれた…
健斗を苦しめたのは私なのに…
ごめんなさい…健斗…
少しすると、後ろに気配を感じて振り返った。
「…恵美…何しているんだ?」
「…圭吾!違うの!」
圭吾は悲しそうな表情をしている。
圭吾はそのまま後ろを向くと、まっすぐ歩いて行ってしまった。
「鈴木さん…俺は…大丈夫だから…龍崎部長を、追いかけて!」
「…怪我した高山さんを、置いて行かれません。」
「俺は、鈴木さんに幸せになって欲しい。今でも大切な人だから!」
「…健斗!」
健斗はゆっくりと、ぐらつきながらも立ち上がった。
「早く…早く行ってくれ!」
「…でき…ない…」
「…行けよ!」
私の背中を強く押し出し、振り返ると健斗は優しく微笑んでくれた。
(…健斗…ありがとう…)
私は溢れる涙を拭いながら、圭吾の後を追いかけた。