運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~
圭吾の過去について尋ねると、早乙女さんの顔が、急に真顔になったことに気づいた。
聞いたことを後悔する。
「ご…ごめんなさい…私…変な事…聞いてしまいましたね。気にしないでください。」
「…いや…恵美ちゃん。教えてあげるよ。」
「あ…あの…やっぱり…止めます…ごめんなさい!」
「…恵美ちゃん。…知っておいた方が良いかも知れない。」
早乙女さんがこれからどんな話をするのか、とても恐くなってくる。
私は聞いたことを受け止めることが出来るのだろうか…
一度目を閉じた早乙女さんは、ゆっくりと瞼を上げて話を始めた。
「龍崎は学生時代から付き合っていた彼女が居たんだ。彼女は龍崎に夢中だった。後から分かったんだけど、彼女も前世でルシファーに憧れる天使だったようだ。学校を卒業と同時に二人は結婚したんだ。」
「そ…そうなのですね…」
「でもね…龍崎は…君の存在に気づいてしまったんだ…」
「わ…私ですか!」
早乙女さんは笑みを浮かべて頷くと、また話を続けた。
真っすぐ見つめられると、心臓が鳴る…
「もちろん、恵美ちゃんは気づいて居ないと思うけど…就活の時に、今の会社の説明会に来てるでしょ?」
「…はい。」
「恵美ちゃんは急いでいたそうだけど、入り口で男性とぶつかったのは、覚えているかな…?」
「あ…確か…遅刻しそうで焦って説明会に来たのは、覚えています。」
「その時に、ぶつかったのは龍崎だったそうだよ。」
「え…そんなに前に…私は龍崎さんに会っていたなんて…」
確かに会社の説明会に、急いでいたのは覚えている。
暫く、当時を思い出していると、誰かにぶつかった事は、少し覚えていたことに気が付いた。
(…あっ!!そういえば…誰かが、ぶつかって落とした資料を拾ってくれたんだ…)
「龍崎はね、恵美ちゃんの存在に気づいたけど、忘れようと努力したんだ。もちろん、妻も愛していたからね…」
私の心臓は激しく鳴りだした。
過去の話とは分かっていても、圭吾が愛した人の話は辛い。
(…聞いたのは、私なのに…後悔している…)