運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~
早乙女さんが帰ってしまうと、圭吾と二人になり、少し気まずい。
圭吾に涙を見せたくなかった私は、笑顔を作り圭吾の顔を見た。
「…恵美、何かあったのか…?」
「…圭吾…私…」
「…えっ…どうしたんだ。」
どうしても涙が、溢れて止めることはできなかった。
涙で圭吾が見えなくなる。
「…圭吾、私の所為で…大切な方を…失ったのでしょ?」
「…恵美…なぜ…それを知っている…」
「…ごめんなさい…何も知らなくて…私は自分の事ばかり…」
「…恵美は何も悪くないよ…俺がちゃんと話せば良かったんだ…不安にさせて…ごめん…」
「…圭吾…後悔しているよね?きっと…」
「…恵美…全て話すよ…」
そろそろお店も閉店の時間が近かった。
私達は家に帰って話すことにした。
私は泣き顔を隠すように、背の高い圭吾の腕に顔を寄せて歩いた。
圭吾は無言で私の頭を優しく撫でてくれる。
泣きたくないのに…また涙が出る。
家のベランダで圭吾は、缶ビールを飲みながら私を呼んだ。
圭吾は隣にいる私の頭を優しく撫でてくれるが、何も話そうとしない.
…少しの沈黙が苦しい…
自分の心臓の音が煩く感じる。
少し時間をおいて、ゆっくりと話始めた。
「…恵美、早乙女から聞いたと思うが、彼女は君を恨んだりしていない。俺は、彼女を愛していた。別れるつもりもなかった。」
「…では…なぜ…彼女は…」
「…彼女は俺を心から愛してくれていた。だからこそ俺を一番幸せに出来るのは、自分ではないと考えてしまったのかも知れないな。」
「…そ…そんなことって…」
「自分のために…運命の人(女性)を諦めて欲しくないと言ったんだ。そして、自ら命を絶ってしまったんだ…俺のために…」
私は、彼女の気持ちを考えると、悲しくて胸が引き裂かれそうだった。
そんなにも…強く…激しく…圭吾を愛していた女性…
圭吾の手は震えていた。
私はそっと圭吾の震える手を、包むように握りしめた。
圭吾もどれだけ辛かったのか…
見たことのない、圭吾の悲しい表情をしている。
私は圭吾をそっと後ろから抱きしめた。
いつも大人で冷静な圭吾が涙を流している。
「…圭吾、お願いがあるの…」