【完】夢見るマリアージュ

「あの、本当に困りますんで!」

そう言って掴まれた手を乱暴に振り払うと、チッと深い舌打ちをした。さっきまでの穏やかな表情とは違い、敵でも見るかのように睨みつける。

「何だよ、少し可愛くなったからと思って
ちょっと位変わったってお前なんて大した女じゃねぇんだよ。 こっちが遊んでやろうつってんのにもったいぶりやがって」

その冷笑は、学生時代に何度も味わってきたものと同じ笑いだ。
’キモイ’’やばい’ 幻聴だろうか。 私を馬鹿にする陰口が耳に付きまとい離れない。

怖い…。 そう思ってぎゅっと目を閉じた時だった。 その場にぺたりとしゃがみ込み、何も見えないように膝を抱え顔を隠した。

さっきまで強く握られた手のひらがジンジンと痛む。 その手を優しく掴み抱え上げられると、世界は一変して見えた。

「ごめん、彼女は俺のだから。 城田さん、行こう!」

息を切らせた北斗さんに腕を掴まれ、そのまま走り出す。
ちらりと後ろを振り返ると、木島さんがポカンと口を開けてその場に立ち尽くしていた。

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