【完】夢見るマリアージュ
「仕事の話ではないよ。北斗くんの方こそ、結婚はどうなんだ?
きっと君の事だから良い縁談が沢山あるのだろう。 うう…ルナがあんな野蛮な男と結婚しなければ…」
そういう話か。
俺が言う前に、父がずいっと身を前に出し、にまにまと俺と桜栄社長を交互に見つめる。
「北斗にも最近良い子が出来ましてなあ」
「おお。それはそれは…!
めでたい話が続きそうでいいですね」
「いやいや、お父さんも桜栄社長も……
まだまだ付き合い始めたばかりですし、結婚なんて…」
そこまで言いかけてぴたりと話が止まる。 結婚を考えていない付き合いなんてしているわけないけど。
そのまま父と桜栄社長は盛り上がってしまっていた。
気がづかれぬよう、そっと社長室を後にする。
結婚か…。
俺は30歳だし、全然遅いって話でもない。
父が今の俺の歳の頃は既に俺が産まれていたのだから。そう考えると学生結婚を決断した父は強い。