【完】夢見るマリアージュ

そして城田さんは俺の出身大学であるK大卒という事で勝手に親近感がわいていた。 いつも下ばかり向いて歩いている彼女。

けれどいつも誰よりも遅くまでオフィスに残って残業をしている姿が印象的だった。

何故それを知っているかというと、俺も残業はよくする方だったからだ。  いずれは阿久津フーズファクトリーを継がなくてはいけない。

そんな器じゃないと知りながらも、俺だけが跡取りだ。 会社の事は一番知っておきたい。

’なんか、早くリリーに会いたくなっちゃったな’ 一旦社長室に戻り仕事を済ませて、今日は早く帰ろう。 そう思って立ち上がった。

――――

仕事ではまだまだうだつが上がらない。 社長室で入って父に倣い仕事をしているが、自分と父の性格は正反対だ。

自由で大胆な発想を持っている父である阿久津社長は、頭こそ禿げているがカリスマ性がある。

ネット事業もいち早く取り入れており、社長として動画サイトのチャンネルも持っている。 アクティブな人だと思う。

どちらかといえば大人しい自分とは全然違う。 だから取引先の上層部の人間からは’北斗君は少し頼りないよ’と言われがちだ。

けれど、父はそんなどこか頼りない息子を咎めたりはしない人だ。
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