【完】夢見るマリアージュ
’私は私で、北斗は北斗でいい’といつも言う。
母同様、とても尊敬している。 自分を一貫して貫き通している所は尊敬できるし、当時沢山あった良いお見合い話を全て蹴って
大学生だった父は母と学生結婚したのだ。 自分も父の背中を倣って、立派な人になりたいと思うけれど現実はそううまくもいかなくて。
思えば父が自分の今の年齢の時には既に自分は小学校に上がっていたのだ。 そう考えると、子供染みているとは思う。
一仕事終えて自宅へ帰ろうとした時既に時刻は21時過ぎ。
今日も一日疲れた、エレベーターに乗り込むと営業部のある階下でエレベーターが止まった。
乗り込んできた人物と目が合うと互いに「あ」と声が漏れた。 乗り込んできた人物は直ぐに顔を伏せた。
「お疲れ様」
「お……おつかれさまです…」
小さく消え入りそうな声でそう言った。
そしてまた俯いてしまった。 就業中は後ろで一つに結んでいる真っ黒の髪を解き、分厚い眼鏡をかける。
狭いエレベータ内でギリギリまで壁に寄って、背中を向ける。 俺は嫌われているのだろうか。