【完】夢見るマリアージュ
「今日も残業?」
「はい…」
「そう、毎日毎日お疲れ様だね」
「いえ、全然…私なんて…」
声を掛けたけれど、彼女の背中は小刻みに震えていた。 その姿を見て、リリーがうちにやって来たばかりの頃を思い出した。
触れてしまったら壊れてしまいそうな脆さを、彼女の背中に重ねていた。
「この間はごめんね?」
「え?」
「変な所に遭遇させてしまって、しかも後から思ったんだけど…
あんな遅くに女性を一人で帰らせてしまうなんて。
大丈夫だった?帰り道」
「そ、そんな…! 私なんて全然大丈夫です…!
一人で帰る事なんて慣れていますし…
北斗さんにそんな事を考えさせてしまって、逆にごめんなさい……
気にしないで下さい。 私みたいな気持ち悪い女とも呼べない女、一人で夜道を歩いていたって何も危ない事などありやしませんからッ」