【完】夢見るマリアージュ
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「すっごい真っ白…! かわいい!」
「でしょう?俺の癒し。」
満員電車を降りた後、ほんの少しだけ城田さんの警戒心が薄れたような気がする。
画像の中のリリーを見た時、初めて彼女の口角が上がって笑っているのだと気が付いた。
分厚い眼鏡の奥に隠された瞳は余り見えないけれど、携帯を両手で持って凝視する彼女から僅かに笑みが零れる。
「でも……全然私に似ていないじゃないですか…」
「ええー似てるでしょう。真っ白な所とか。 いっつも口角が下がっている所とか」
「口角下がっている…。確かに」
それにはやけに納得したようだ。
「でも初めて笑っている顔も見れて嬉しいよ。それにリリーもいっつも口角下がってるし。
まあうさぎだから笑ってても怖いけどさ。」
「リリー? 由来は百合ですか?」
「そう。よく分かったね。」
「真っ白で綺麗だからそうかなあと。 いいですね、素敵な名前……」