【完】夢見るマリアージュ
毎日自炊して、会社にもお弁当を持っていく。
お洒落な東京のカフェはそれだけお値段も高いから、お菓子さえ手作りを始めた。 …まあ、それ以前にお洒落な都会のカフェに一人で入る勇気もなかったのだが…。
そんなお菓子作りが北斗さんと連絡先を交換するきっかけになるなんて、人生は何が起こるか分かったものじゃない。
帰ってきて直ぐにお風呂に入って、顔を洗い終えた後鏡で自分の顔を見て驚いた。
…ブスすぎる。 いやそれは元々知っていたけれど…。 そうじゃなくって、私は一人で自然とニヤケていたのだ。
緩んだ心を引き締めるために、両手でパンッと自分の頬を叩く。
「勘違い、しない……」 そう強く自分に言い聞かせる。
連絡先を交換したからといって何だと言うのだ。それ以上発展しようがなさすぎる。
彼は阿久津フーズファクトリーの社長の息子で、私と違った美しい容姿を持っている。 初めから相手にされるわけないんだから…。
「もう少し痩せようっかなあ」 しかし自分の下っ腹を掴みながら、また独り言を言っていてハッとする。
ダイエットなんかしてどうなるというのか。 ブスは痩せたってブスに違いない。 努力をするだけ無駄だ。
それでもどこかふわふわとした気持ちのまま、お風呂を上がる。 冷蔵庫の中を物色し、余り野菜でうどんを作ろうと決めた。