【完】夢見るマリアージュ
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「きゃー、北斗さんよぉ。」
「あ、こっち見て手を振ってる!」
「あんた馬鹿ね。私に向かって手を振ってるのよ。」
「でも本当にいいよねぇ、北斗さんって社長の息子だっていうのに偉ぶってもいなくってさ」
この数日。
私は隠れてこそこそと北斗さんとやり取りを続けていた。
この間は残業の手伝いまでしてくれて、また送ってもらった。
毎日のようにラインのやり取りをして、色々な話もした。
今も営業部に顔を出した彼が、こちらに向かって小さく手を振ってきた。 あたりをキョロキョロと見回した後結局手は振れずじまい。
すぐに携帯が鳴って、彼からのラインを受信した。
『手振ったのに無視されたー( ;∀;)笑』 まるで二人しか知らない秘密を共有しているようで、顔が自然にニヤケしまう。
「あんたら何を勘違いしているのよ?!」
直ぐに顔を上げたら、こちらを睨みつける岸田さんの恐ろしい顔が眼に入る。 正確にいえば、私を通り越して黄色い声を上げていた女子社員を睨みつけたのだが、肩をすくめる。