【完】夢見るマリアージュ
「北斗さんがあんた達レベルの女を相手にするわけないじゃない?!
私は今度北斗さんと飲みに行く約束もしているの!
全く身の丈ってものを分かった方がいいわよッ」
フンッと顔を背けて、岸田さんは踵を返した。
女子社員のひそひそ声が聴こえる。
「怖~~~ッッ。 岸田さん、北斗さんの事ずっと狙ってるもんね~」
「ね~ッ。飲みに行くって本当かなあ?
噂では北斗さん岸田さんの事全然相手にしていないらしいけどね」
「でも岸田さん顔だけは綺麗だもんね……北斗さんと何かあってもおかしくはないけどね」
「そういえば北斗さんと言えば事務の青柳さんの事振ったらしいよ」
「えー、あのめっちゃ可愛い子だよね? 北斗さん、謎過ぎる」
女子社員の噂話に思わず耳を傾ける。 胸の中で少しだけ優越感。
いやいや、勘違いしちゃいけないでしょーって…。 たとえさっき手を振ってくれたのが私だとしても、私のような女を北斗さんが相手にするわけない。
少しばかり仲良くなったからといって、自分が特別だとは思いこんではいけない。 また母の言葉を思い出し、少しだけ憂鬱になってしまった。