【完】夢見るマリアージュ
そしてタクシーを降りる際、彼はもう一つ嬉しい言葉を投げかけてくれた。
「また、誘ってもいい?」
「あ、ええと…あの…」
また、こんな楽しい時間が過ごせるならばそれは夢の様な話だ。 しかし戸惑ってしまう。
嬉しいのに……直ぐに’はい’と言えない。
「それにもし良かったら今度城田さんの作ったお菓子も食べたい。」
こんなのからかわれているだけだよ。 自分にそう言い聞かせ努めて冷静に振舞う。
社交辞令。何度も心の中で唱えて、自分なりの笑顔を作る。 普段人に笑いかける事など余りないので、慣れない事をすると普段使っていない筋肉がピクピクと動く。
「いつでも作りますよ。 それに北斗さんの暇な時間があれば誘ってください。」
そう言うと、彼は顔をくしゃくしゃにして子供っぽい笑みを作る。 その表情を見たら更にドキドキが止まらなくなっていく。