【完】夢見るマリアージュ

「じゃあ、俺帰るね。 城田さんもあんまり根詰めないようにね。」

「はい、ありがとうございます。 お疲れ様でした。」

彼が営業部から出てくる時、思わず物陰へと隠れてしまった。 どうして…一体俺は。
息を殺し、その場にしゃがみこんで片手で口元を覆う。
一体、何を考えている。

「北斗さん…?」

その声に顔を上げると、不思議そうな表情をしている城田さんがこちらを見下ろしていた。

「大丈夫ですか?!どこか具合いでも悪いんじゃあ……」

直ぐにしゃがみこんで心配そうにこちらを見つめる彼女。 黒目がちな瞳が瞬いている。
取り繕うようにいつもの笑顔を作った。

「いいや、何でもないんだ。」

「そうですか、ならいいんですが……」

「それよりも仕事は終わった? この間話してた居酒屋さんでもどうかなーっと思って」

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