ふたつ名の令嬢と龍の託宣
そのとき、王妃に目通りを求める者の来訪が告げられる。
「恐れながら王妃殿下。ハインリヒ王太子殿下のお言葉を届けに参上仕りました」
頭をたれてその者は続けた。
「アンネマリー・クラッセン侯爵令嬢を、今日一晩、王妃殿下の離宮にて保護していただけないかとのご伝言です」
「アンネマリー嬢はリーゼロッテ嬢の従姉だそうですよ、イジドーラ様」
リーゼロッテ嬢を心配して王城に居残ったみたいです、とつけ加えながら、灰色の髪の少年、カイは、王妃の許可もなく立ち上がった。
「あらそう」
カイの無作法ぶりを気にとめた様子もなく、王妃はしばらく考えをめぐらせた。
イジドーラとカイは、叔母・甥の間柄である。ときおり、王妃様と家臣ごっこをして遊ぶのが、ふたりのブームだった。
まわりの者は、もう慣れたとばかりに静観している。要は、諦めたのだ。
「恐れながら王妃殿下。ハインリヒ王太子殿下のお言葉を届けに参上仕りました」
頭をたれてその者は続けた。
「アンネマリー・クラッセン侯爵令嬢を、今日一晩、王妃殿下の離宮にて保護していただけないかとのご伝言です」
「アンネマリー嬢はリーゼロッテ嬢の従姉だそうですよ、イジドーラ様」
リーゼロッテ嬢を心配して王城に居残ったみたいです、とつけ加えながら、灰色の髪の少年、カイは、王妃の許可もなく立ち上がった。
「あらそう」
カイの無作法ぶりを気にとめた様子もなく、王妃はしばらく考えをめぐらせた。
イジドーラとカイは、叔母・甥の間柄である。ときおり、王妃様と家臣ごっこをして遊ぶのが、ふたりのブームだった。
まわりの者は、もう慣れたとばかりに静観している。要は、諦めたのだ。