ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「ときにカイ。ハインリヒの今後の予定はどうなっているかしら?」
「ハインリヒ様のご予定ですか?」

 朝の王議会出席は毎日あるが、最近の大きな予定といえば、宰相との歓談を兼ねた昼食会や、王都での新しい橋の着工のための式典への出席、司祭枢機卿の誕生日を祝う会の出席など、その他こまごました公務がいくつかあった。カイにそれを聞くと、「そう」と言って、王妃はまたしばらく黙り込んだ。

 こういった時の彼女は、頭の中で策略をめぐらせている。気分のおもむくまま好き勝手やっているようで、その実、計算高く行動していた。

 カイは、そんな叔母が好きだった。かっちりと型にはまった自由のない身分にいながらも、思うままに生きるイジドーラがまぶしくもあった。巧妙かつ狡猾で、そのくせ、失敗も多い。その失敗すら楽しんでいる節がある。

「決めたわ」

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