ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 そのときリーゼロッテがいる寝室の隣にある、居間の扉がノックされた。この客室には、客を出迎える居間と、侍女が控える小部屋、そして奥にこの寝室があった。

「わたしが見てまいります。お嬢様はもう少しお休みになっていてください」

 そういうと寝室の扉を閉めて、エラが部屋を出ていった。しばらくして戻ってきたエラが、来訪者はアンネマリーだと告げた。明日にしていただきましょうか? と、寝起きの主人を伺うようにエラは問いかけた。

 きっと心配して王城に残っていてくれたのだ。お茶会が終わってから、何時間もたつ。心細かったかもしれない。

「いいえ、お会いするわ。きちんとお礼を言いたいの」

 アンネマリーなら、ちょっと乱れたこの格好で会っても問題ないだろう。しわになったドレスを形だけ手で伸ばして、おろした髪は手櫛で整えた。

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