ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「明日は一緒に帰りましょう? きっとみんな心配しているわ」

 アンネマリーの言葉に、リーゼロッテはどう説明しようかと逡巡した。王子の命で、いつまでかはわからないが、当分は王城から帰れないのだ。

「アンネマリー……そのことなのだけれど……わたくし、しばらくこのまま王城に滞在することになったの」

 エラも初耳だったようで、驚きに目を見開いている。

「その、王子殿下の命で……、きちんとお父様にも連絡が行っているはずよ。だから、心配しないで……?」

 上目づかいでそう話すと、アンネマリーは怒りに満ちた表情をしていた。タレ気味の目をつり上げてもいまいち迫力に欠け、かえって可愛らしく見えた。

「王子殿下の命令ですって!? いったい何があったというの、リーゼロッテ!」

 肩を揺さぶられ、リーゼロッテの頭がかくんかくんと前後した。

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