総長様の溺愛は、甘すぎます。
それから、長谷部さんに案内されて、お屋敷に入ると、長谷部さんは申し訳なさそうに口を開いた。

「申し訳ありません。凌様はこの婚約の事をあまりによく思っていなくて、出掛けてしまったようです…」

うん…そりゃあそうだよね。顔も知らない相手と婚約なんて、嫌に決まってる。

「大丈夫です。お帰りになってから、ご挨拶させていただきます。」

「ありがとうございます。あ、そうです。花衣様の部屋はこちらです。」

長谷部さんについて行くけど、なんか、迷子になっちゃいそう…私、方向音痴なのに…

「ここですね。すでに荷物は運んでありますので、この部屋は好きにお使いください。」

「色々とありがとうございます。」

「いえいえ。それでは、僕は、失礼します。」

去っていく長谷部さんに私はもう一度、お辞儀をした。
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