星の群れ
 いつもの通りイゴニアの葉でお茶を淹れる。ほわほわと立ち昇る湯気の温かさに満足して、僕はひとつうなずいた。

「レーテ、できたよ」

 ティーカップを手に、奥の部屋の戸をノックする。

 飲み物を載せたコースターを片手で持ち、空いた手で他の作業をすることにはとっくに慣れた。僕の特技と言ってもいいくらいだ。何と言っても僕の雇い主は、魔術の才能と同じくらい、次々と助手に用を申し付ける才能にあふれている。

「レーテ。先生」

 僕はのんびりと二度目のノックをした。

 レーテ・フィステが親から受け継いだこの家は大層年季が入っていて、基本的にどこも古色がついている。その中で、唯一若々しい茶色をしているのがこの戸だった。最近僕が新しく造り直したのだ。物言わぬこの部屋が、主の“実験”の一番の被害者だということは疑いようもない。

 もっとも村の人たちから見れば、レーテ女史の一番の被害者は僕であるらしい。

 まあそれはさておき。

 部屋の中から返事はない。僕はノックするのを止めて、軽く首をかしげた。ドアノブに手をかけ、

「入るよー」

 かちゃり。遠慮なく戸を開ける。
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