星の群れ
「あの星全部ねえ」

 僕は女史の隣に立って、一緒に空を見上げた。

「――キミの手には負えないと思うよ」

 ごすっ。

 間髪を容れず、僕の脇腹に拳が突き刺さる。痛い。

「助手風情が、随分あたしを侮ってくれるじゃない。何を根拠にそんなことを言うのかしら?」

 『返答如何によってはただじゃおかん」のオーラを立ち昇らせながら、レーテ女史はにっこり笑う。いやいやいやお待ちくださいお姉さん。むしろお姐さん。僕は慌てて片手を突き出し、「そういう意味じゃないよレーテ!」と声を上げた。

「僕が言いたいのはさ、あんな無数の星は誰の手にも負えないっていうか、むしろ一人で操れるようになっちゃったらそいつはバケモノだしろくなことにはならないよっていうことだよ。これ以上村の人たちを怯えさせて山姥以上の称号を得なくてもいいんじゃないかと思うんだ力一杯心から」
「アンタの言い回しっていつも微妙にムカつくのよね……」

 女史の薄くて整った唇の端が、ひくひくと引きつった。しかしそれも一瞬。

「……周りにどう思われようと構わないわよ」

 その目から心が抜け落ちる。半眼になり、彼女はそう呟いた。

 ――あたしの願いが叶うなら。

 聞こえない言葉が続いたような気がした。
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