星の群れ
 僕は女史の傍らのテーブルにティーカップを置き、問いかけた。

「どうかしたの? 今回の実験は九分九厘いい結果が出ないだろうって、最初から分かってたんじゃなかったっけ」
「そうよ、案の定失敗したわよ。いいのよ“失敗する”ってことを確かめるための実験だったんだから」

 女史はイライラと、そんなことはどうでもいいのよ――とささくれ立った声で唸った。ぞんざいな手つきでティーカップを取り、一息に飲み干す。

「ゆっくり飲まないともったいないよ、レーテ」
「なくなったらアンタに淹れ直させればいいだけでしょ」
「そりゃ何杯でも淹れるけどね僕は。でもそれを繰り返してたら太るよ? イゴニアは甘いからね――服着られなくなってもいいのかな。その服、仕立て屋のアンナちゃんが初めて作った記念の服でしょ」

 うぐ、と女史は喉を引きつらせた。

 ランプが照らし出す魔術師先生の衣装。炎と同じ色の衣装は、激しい気性の女史によく似合う。女史に懐いている村の小さな女の子が、初めて一人で仕立てた服。実験中はもっと汚していい服を着ていたはずなんだけれど、いつの間にか着替えたらしい。多分、実験が終わったから気分を変えたかったのだ。
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