星の群れ
「……細かいことをいちいち覚えてるんじゃないわよ」

 ぼそぼそと女史は言った。まるで恨み言でも言いたそうな声だが、僕は気にしない。

 改めて、夜空の下の魔術師先生を見つめる――柔らかい飴色のくせっ毛、白い肌。顔立ちはとてもいいのに、目つきが怖い。何かひとつに注目すると徹底的に観察せずにいられないその視線の迫力は、日々を流れるように生きている村人たちにはすこぶる評判が悪かった。唯一仕立て屋の一人娘だけが、女史に悪意などないことを理解している。きっとアンナ嬢は気づいているに違いない――魔術師先生の瞳がよく見ると、とても深い輝きを湛えた緑柱石色だということを。

 体つきは痩せていた。普段は、細いその輪郭を誤魔化すかのように、大振りなローブを好んで着ている。「それではもったいないですよう」と、アンナ嬢はわざと体の線が出る服を仕立てたのだった。

 表向き「余計なお世話よ」と礼さえ言わなかった女史のこと、きっとこの服を着るのは夜の間だけだろう。僕以外の誰にも見られることのない――この世の支配者たる太陽さえも寝入るこの一時だけ。

 僕は明日アンナ嬢に報告しようと、ひそかに心に決めた。
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