星の群れ
「あたしが星に興味を持つなんて、星の秘めるエネルギーが目当てに決まってるでしょう」
「――僕の中の女史はそのままでよさそうだね」

 全くもってレーテらしい言葉だ。僕は女史から見えないようにひそかに苦笑した。

 レーテは昔からそうだった。可憐な花を見れば「このか弱そうな風情が子孫繁栄のためにどんな風に作用しているのかしら」とか呟き、雄々しい樹を見れば「この生命エネルギーを魔力に変換したらどれくらいの量かしら」とか呟く。十に満たないような子供の時分から、そうだったのだ。

 そして僕はそんな女史の後ろを、延々とついて回っていた。物心つく頃からずっと。

 可愛げのない言動のために、段々味方をなくしていく少女の後ろを。

「もしも星を手に掴めるならキミはどうするの?」

 僕は尋ねた。

 魔術師先生は、ぴんと細い眉を跳ね上げた。「そうねえ」と顎に指をかける。

 緑柱石の瞳に光が灯った。情熱的な、好奇心の灯火。

「まずは質量をどうにかしないとね。星を手繰り寄せたらとんでもないサイズになるだろうから……そうでなくてはエネルギーの抽出のし甲斐がないけど。それから、そうねえ。どういった種類のエネルギーかを調査して……どういった力に変換可能かも……問題は現在でもエネルギーを保っている星がどれだけ空に残っているかなのよねえ。光の伝達速度を考えれば、今見えている星が何年前に生きていたものかもちょっと分からないし……」

 途中からは、もはや独り言でしかない。

 それをずっと聞いていてもよかったけれど、僕はあえて遮った。

「そうじゃなくてさ。もし可能なら、そのエネルギーを何に使いたいの?」

 レーテが初めて僕を見た。

 ぽかんとしている。虚を突かれて、言葉を失っているようだ。
 僕はゆっくり繰り返した。

「――何か、大きなエネルギーを手にして、やりたいことがあるんじゃないの?」
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