悪魔の僕は天使の君に恋をする
翔北高校グラウンド。そこではサッカー部が近隣高校との練習試合を行っていた。
「行け!黒崎!」
ルナは仲間からパスを受け取り相手のディフェンスをくぐり抜ける。
(いける…!)
渾身の力で放ったシュートは、見事に決まった。
「やった!」
ルナがガッツポーズを決めると、仲間から歓声が上がった。
丁度試合終了のホイッスルが鳴り響く。
「ナイスだったぞ、ルナ。リベロにも慣れてきたな」
味方のゴールから親友の花里景太がにこにこしながら駆けてきた。
「景太こそ、今日も無失点だったじゃないか。すごいよ」
「うん、まぁな」
照れ笑いする彼の腕にはキャプテンマークが付いていた。
──花里景太。僕の親友で、2年生にしてサッカー部キャプテンを任されている強豪選手だ。ポジションはゴールキーパーで、高校入学以来無失点記録が続いている。
しかも、長身で穏やかな性格のため友達も多く、女子が放っておかない。少々抜けているところもみんなに愛されている理由の1つだ。
挨拶を終えてベンチに戻ると、マネージャーの雨宮百合が2人にタオルを手渡した。
「はい、2人とも。おつかれさま」
「さんきゅ、百合」
「ありがとう、雨宮さん」
──雨宮百合。景太の幼なじみで、僕の友人でもある。景太とは対照的にしっかり者で、面倒見が良い。
「黒崎君、今日ナイスシュートだったね!」
「うん、景太と雨宮さんが練習付き合ってくれたお陰だよ」
「それでもすごいわよ!もともとディフェンス専門だったのに、春休みですごく伸びたね」
「えへへ……」
「なぁ、俺は?」
「景太はいつも通りでしょ」
「えー……」
唇を尖らせる景太を見て、ルナは笑った。
──僕の名前は黒崎ルナ。翔北高校2年生でサッカー部員。どこにでも居る普通の男子高校生。
……ではない。
僕の正体は、悪魔だ。
魔界から現世の日本にやって来て、わざわざ人間のふりをしているのには訳がある。
日本で修行している大天使の娘を殺すためだ。
悪魔として劣等生だった僕は、人間に不幸を与える悪魔の仕事がどうしても苦手だった。
その結果、1日の成果は良くて一桁。まだスクールに通っている弟にも劣っている。
そうしているうちに、悪魔王の父から悪魔としての自覚が足りないと冷酷に告げられ、大天使の娘を殺すまで家に帰ることができなくなってしまった。
しかし、それらしい天使も見つからず、殺すことにも気乗りせず、ぐずぐずしていたら1年が経過してしまった。
(もう魔界のみんなは僕のこと忘れてるかもな……)
ルナは思わず溜息をついた。
「ルナ、どうかしたのか?」
景太が心配そうにこちらを見ていた。
「ううん、何でもない」
「ならいいけど……ほら、早く着替えて帰ろうぜ。今日3人でラーメン食べに行く約束だろ」
「そうだった!」
ルナは慌てて頷き、景太と共に部室に向かった。
(案外帰らなくてもいいかもしれないな)
そんな考えがルナの頭をよぎった。
「行け!黒崎!」
ルナは仲間からパスを受け取り相手のディフェンスをくぐり抜ける。
(いける…!)
渾身の力で放ったシュートは、見事に決まった。
「やった!」
ルナがガッツポーズを決めると、仲間から歓声が上がった。
丁度試合終了のホイッスルが鳴り響く。
「ナイスだったぞ、ルナ。リベロにも慣れてきたな」
味方のゴールから親友の花里景太がにこにこしながら駆けてきた。
「景太こそ、今日も無失点だったじゃないか。すごいよ」
「うん、まぁな」
照れ笑いする彼の腕にはキャプテンマークが付いていた。
──花里景太。僕の親友で、2年生にしてサッカー部キャプテンを任されている強豪選手だ。ポジションはゴールキーパーで、高校入学以来無失点記録が続いている。
しかも、長身で穏やかな性格のため友達も多く、女子が放っておかない。少々抜けているところもみんなに愛されている理由の1つだ。
挨拶を終えてベンチに戻ると、マネージャーの雨宮百合が2人にタオルを手渡した。
「はい、2人とも。おつかれさま」
「さんきゅ、百合」
「ありがとう、雨宮さん」
──雨宮百合。景太の幼なじみで、僕の友人でもある。景太とは対照的にしっかり者で、面倒見が良い。
「黒崎君、今日ナイスシュートだったね!」
「うん、景太と雨宮さんが練習付き合ってくれたお陰だよ」
「それでもすごいわよ!もともとディフェンス専門だったのに、春休みですごく伸びたね」
「えへへ……」
「なぁ、俺は?」
「景太はいつも通りでしょ」
「えー……」
唇を尖らせる景太を見て、ルナは笑った。
──僕の名前は黒崎ルナ。翔北高校2年生でサッカー部員。どこにでも居る普通の男子高校生。
……ではない。
僕の正体は、悪魔だ。
魔界から現世の日本にやって来て、わざわざ人間のふりをしているのには訳がある。
日本で修行している大天使の娘を殺すためだ。
悪魔として劣等生だった僕は、人間に不幸を与える悪魔の仕事がどうしても苦手だった。
その結果、1日の成果は良くて一桁。まだスクールに通っている弟にも劣っている。
そうしているうちに、悪魔王の父から悪魔としての自覚が足りないと冷酷に告げられ、大天使の娘を殺すまで家に帰ることができなくなってしまった。
しかし、それらしい天使も見つからず、殺すことにも気乗りせず、ぐずぐずしていたら1年が経過してしまった。
(もう魔界のみんなは僕のこと忘れてるかもな……)
ルナは思わず溜息をついた。
「ルナ、どうかしたのか?」
景太が心配そうにこちらを見ていた。
「ううん、何でもない」
「ならいいけど……ほら、早く着替えて帰ろうぜ。今日3人でラーメン食べに行く約束だろ」
「そうだった!」
ルナは慌てて頷き、景太と共に部室に向かった。
(案外帰らなくてもいいかもしれないな)
そんな考えがルナの頭をよぎった。