悪魔の僕は天使の君に恋をする
3人が校門を出ると、そこには黒いリムジンが止まっていた。


「このリムジン、たしか藤堂さんの……」


ルナが呟くと、リムジンのドアが開いて制服姿の少女が降りてきた。少女は長い黒髪をかき上げて、ルナに向かってにこりと微笑んだ。


「ルナ君、ごきげんよう!」


──藤堂菫。僕のクラスメイトで隣の席に座っているお嬢様だ。校内有数の美人で、その家柄も相まってとても目立つ。

そんな彼女だが、僕にやたらと構ってくるのだ。理由が分からないため、いつも少し戸惑ってしまう。


「今日の練習試合、お見事でしたわ。わたくし、陰ながら応援しておりましたの」


「そ、そっか。ありがとう藤堂さん」


すると菫はにこにこしながら言った。


「疲れましたでしょう?家までリムジンでお送りしますわ。勿論、お友達も一緒に」


「いや、僕達これからラーメン食べに行くから、今日は遠慮しておくよ」


「そう……」


しょんぼりした様子の彼女を見て、ルナは罪悪感で胸がいっぱいになった。


「なら、藤堂さんも一緒にどう?」


百合の提案に、菫は目を輝かせた。


「いいんですの?!ちょっと待って、今執事に相談しますわ」


そう言うと菫はリムジンの中に戻っていった。

それは庶民の食べ物ですやら、はしたないですやら、お嬢様一人でお店に行かせるのは旦那様が心配なさりますやら、口論の声が車の外まで聞こえてきた。


「悪いことしちゃったかな……?」


「雨宮さんは悪くないよ。藤堂さんの家、ルールとか厳しそうだし……」


しばらくして、菫が勝ち誇った顔でリムジンから出てきた。


「わたくしも一緒に行きますわ!」


菫を加えて、ルナ達はラーメン屋に向かって歩き出した。


「ところで、らーめんってどんな食べ物ですの?」


「藤堂、ラーメン食べたこと無いのか?!」


景太が目を丸くした。


「ええ。ありませんわね」


すると景太は、真顔で菫を見つめて言った。


「いいか藤堂、ラーメンってのは至高の食べ物だ……食べると気力が回復し、疲れがぶっ飛んで、何でも出来るようになる……」


「まぁ、そんなすごい食べ物なんですの?」


目をキラキラさせる菫を余所に、百合は景太を小突いた。


「藤堂さんに変なこと吹き込まないの、ばか」


そう言いながら百合はスマホでラーメンの画像を検索した。


「こんな感じの食べ物だよ。醤油とか、塩とか、味噌とか、色々種類があって、どれも美味しいの」


「美味しそうですわ~!ね、ルナ君!」


「うん、そうだね」


話しているうちに、ルナ達は横断歩道に差し掛かった。

青信号になり、前を歩いていたルナと菫は横断歩道を渡り始める。

その時だった。

信号を無視したトラックがルナ達めがけて突っ込んできたのだ。


「藤堂さん!」


ルナは菫の背中を思い切り突き飛ばした。


「ルナ君!」


次の瞬間、ルナの体に強い衝撃が走り意識が飛んだ。


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