悪魔の僕は天使の君に恋をする
* * *

体育祭当日がやってきた。

全校生徒は大賑わいだ。午前中の中間発表が終わった段階で、1組の属する赤組は2位だった。

午後の最後の種目が、ルナの出場するクラス対抗リレーだ。


「あ、ルナ兄みっけ!」


観客席から弁当を持ったヨルが駆け寄ってきた。


「一緒に弁当食べようよ」


「うん。いいよ」


ルナがヨルについて行こうとすると、突然誰かに目隠しされた。


「だーれだ?」


聞き間違えるはずがなかった。


「ハル……!?」


「当たり」


振り返るとそこにはハルが居た。


「ちょっと抜け出してきたんだ。ごはん、一緒に食べようよ」


思いがけない幸運だった。まさかハルと一緒に昼食が食べられるとは。

ルナは慌てて頷いた。


「あ、うん!……弟も一緒でいい?」


「もちろん」


「ありがとう!……ヨル行こう」


そう言って振り返ると、ヨルは驚いた顔をしていた。


「ヨル……?」


「……あ、うん。行こうか」


「……大丈夫?」


「大丈夫!」


ルナはヨルの様子に首を傾げたがヨルは普段通りに笑ってみせた。


「ほら、こっちだよ!」


ルナ達はヨルの準備していたレジャーシートに座った。


「ボクのお弁当は……これだ!」


ハルが勢いよく開けた弁当箱の中には、卵焼きやたこさんウィンナーなど、可愛らしいおかずが入っていた。

 
(僕達の茶色い弁当とは大違いだな……)


ルナとヨルの弁当箱には野菜炒めの残りと唐揚げ、それからプチトマトが入っていた。


「ルナの種目は午後から?」


「うん。午後の一番最後なんだ」


「そっか、頑張ってね!」


しばらくもくもくと弁当をつつき、そういえば、とハルは顔を開けた。


「弟君ははじめましてだね。ボクの名前は白神ハル。よろしくね」


「黒崎ヨル……よろしく」


ヨルはいつもの様子と異なり、ハルのことを警戒しているようだった。


(ヨル……どうしたんだろ?)


「あ、ハル!やっと見つけた!」


ハルの友達が、ハルに声をかけたようだった。


「急に居なくなったから心配しちゃった!……ほら、早くしないと花里君のお昼休みが終わっちゃうよ~!」


「分かったよ。今行く」


ハルは弁当を平らげ、立ち上がった。


「それじゃあ午後の部、頑張ってね」


ハルはヒラヒラと手を振りながら、友達の方へ走って行った。


「……ねぇ、ルナ兄の好きな人ってもしかして今の人?」


突然の問いかけに、ルナは顔を真っ赤にして頷いた。


「そっか……」


「ヨル、ハルがどうかしたの?」


するとヨルはいつもの悪戯っぽい笑顔で言った。


「別に!あんまりうつつを抜かさないでね。ルナ兄の使命は、大天使の娘を殺すことなんだから」


『昼休み休憩は残り5分です。選手の皆さんは控え場所に戻って下さい』


「ほら、呼ばれてるよ」


「あ、うん……」


ルナはヨルに違和感を覚えながらも、自分の席に戻った。




< 40 / 120 >

この作品をシェア

pagetop