悪魔の僕は天使の君に恋をする
その日は景太とルナ、2人だけで帰った。

劇の練習をしていたら外はすっかり暗くなっていた。


「ねぇ、景太」


「何だ?」


「今更だけど、どうして僕を王子に選んだの?」


「ああ……お前が聞いたら怒りそうな理由だけど、いいか?」


どんな理由だ。ルナは思わず苦笑いした。


「別に良いよ」


「場の空気を変えようとしたんだ。百合が困ってたから」


景太の言葉を聞いて、ルナは納得した。

確かにあの日、百合が名指しされたときの空気は悪かった。まるで百合を陥れようとしているかのようだった。景太がそこまで気付いていたかは分からないが。


「俺が姫をやって、お前が王子をやる。大分インパクトあるだろ?絶対に空気が良くなると思ったんだ」

 
「確かに」


ルナは笑いながら頷いた。


「……百合が何も言ってくれないなら、言ってくれるまで待つ。俺は百合の力になりたい。だって幼なじみだからな」


景太は真顔でそう言うと、ルナの方を見つめて言った。


「巻き込んで悪かった」


「いいよ、謝らなくても」


ルナは穏やかに言った。


「雨宮さんと仲直りできると良いね」


「……ああ。そうだな」



ティロン!



2人のスマホが鳴った。


「誰からだろう……?」


確認してみると、ハルからだった。


『明日から、ボク達の学校で文化祭があるんだけど、みんなも来ない?』


「行きたい!……あ」


ルナは思わず声に出してしまった。慌てて口を押さえたが、もう後の祭りだった。

景太がニヤニヤしながらこちらを覗き込んでいた。


「行きたいよな。ハルに会えるもんな」


ルナは顔を真っ赤にして俯いた。

その様子を見て、景太はルナの背中をぽんと叩いた。


「いいじゃん、行こうぜ。うちの文化祭は来週だし」
 

「うん……そうだね!」
 

ハルにまた会える。それだけで舞い上がってしまいそうだった。  


(また会えるの、楽しみだな)





 





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