悪魔の僕は天使の君に恋をする
『こうしてシンデレラは王子と幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし』


体育館のステージで、ハルはシンデレラを演じきった。


(ルナ、見ててくれたかな)


ステージ上からは、たくさんの人の中からルナを見つけることはできなかった。

ステージの幕が下りる。舞台袖に向かうと、クラスメイト達が出迎えてくれた。


「ハルちゃん、おつかれさま!」


「良かったよ~」


「ありがとう」


ハルは衣装を脱いで制服に着替えると、ステージ裏から出た。


「あ!ハル!」


美亜が真っ先にハルの元へ駆け寄ってきた。


「おつかれさま!シンデレラ、良かったよ~!」


「ほんとに?」


「うん!なんだか今日のハルはいつもより輝いてるって感じ!」


「そうかな……?」


ハルは首を傾げた。


「そうそう!黒崎君のお陰かな?」


美亜は悪戯っぽく笑った。


「黒崎君と居たとき、にこにこしてて楽しそうだったもんね」


「そうだっけ?」


「そうだよ!」


そうは言いつつも、ハルも気がついていた。ルナと居るときは自然と笑顔になれていることに。


「ハルはほんとに、黒崎君が好きだね~!」


美亜の言葉にハルはハッとした。


(ボクはルナのことが好き……?)


その言葉は自然と胸の中に落ちた。

お人好しで、優しくて、頑張り屋なルナのことが、好き。

どうして今まで気がつかなかったんだろう。


(でも、ボクは天使だ。天使は人間と結ばれちゃいけないし、ボクには婚約者がいる……)


「ハル?どうかした?」


「……ああ、何でもないよ」


「ならいいけど!……劇も終わったし、黒崎君に会ってきたら?」


「ルナに?」


「そ!感想ぐらい聞いてきなさいよ!」


「……うん。そうするよ」


ハルは頷くと、体育館を後にした。


(実らない恋だって分かってる。でも、今だけは……)


ハルはルナ達と待ち合わせた玄関前に向かった。



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